こんにちは、uru(@uru_)です。
私は今科学館に勤めています。その職場で今年の夏、ある1本の映画をみんなで行こうという話が出ました。
それは『ザ・スクエア』という作品。
カンヌ国際映画祭の最高賞を受賞し、一時期日本でも話題になった『万引き家族』を覚えている人も多いかもしれませんが、『ザ・スクエア』はその1年前に受賞した作品です。
たまたまその映画がある映画館で放映されると聞きつけ、私たちはその映画館に行きました。
それが「ユジク阿佐ヶ谷」という小さな映画館との出会いでした。
小さな映画館、ユジク阿佐ヶ谷
JR中央線に位置する阿佐ヶ谷駅。そこから徒歩で数分のところにその映画館はありました。マンションの一角にあり、劇場は地下にあるため、気をつけていないと気づかずに通り過ぎてしまうほどです(※実際の通り過ぎました)。
公式WEBサイトによれば、ユジク阿佐ヶ谷は2015年4月にオープンしたミニシアター。もともとスタジオだったスペースをリニューアルして作ったようです。
大手劇場での配給が終わってしまった映画、話題性はなかったが芸術性の高かった映画を多く上映しているようです。
私が行った日は平日だったのですが、その日は地域コミュニティーのグループが一緒にご覧になっていたようでした。私も本数こそ多くないものの映画は好きで、多少古くなっても良質な映画を観られる場所が地域にあるというのは羨ましいことですね!
ちなみに今回観た『ザ・スクエア』という映画は今の仕事ととても関係のある作品でした。ある美術館に登場する展示で、ミュージアムのキュレーターがその作品を中心に騒動に巻き込まれて行くという作品です。同じミュージアムに働くものとして、職場の生々しさ、作品と自分との境界線が曖昧になって行く姿などなど、数々の描写に期待を持ったのです。
151分の長さを忘れる没入感あふれる作品でした。
映像作品なのに、まるでテクスチャのような1枚1枚の枠のようにも見え、作品の中にいくつも登場するスクエアのなかで、主人公が騒動に巻き込まれて行く姿が印象的でした。
「思いやりの聖域」「自由の権利と義務を得る場所」・・・理想の世界を見直せば見直すほど、自分のフレームワークの中で狭く物事を捉えている主人公。フレームワークの外にあるものに卑下や軽蔑の眼差しを向け、それが次第に主人公(そしてその子どもまで)人生を狂わせていく。
同じミュージアムに務めるものとして、非常に教訓深い風刺とも思いました。題材としてミュージアムという崇高な場所を選択し、一般的にも、そしてキュレーターとしてもその自負がある場所。その敷地から一歩外に出れば、どこにでもいるどうしようもなく生々しく人間らしい存在になってしまう。
果たして自分はどうだろうか。
問い詰めざるを得なくなる、とても他人事とは思えない作品でした。
おわりに:忘れられない作品が見つかる場所・映画好きにはたまらない場所
今や映画のDVDをレンタルするという文化もなくなりつつあり、テレビやスマホでほとんど無料で手軽に見ることも容易になった映画。大手配給では動員数の取れる大衆向け映画ばかりが流れる今、このようなコミュニティとしての役割を果たしている小さなシアターの存在は大きな意味をもつと感じました。
映画はときに、観客とともに完成されるものなのかもしれない。それは『ザ・スクエア』の中でも少し触れられていたテーマであり、同時にこれを見ることになった「ユジク阿佐ヶ谷」そのものにも感じられたことでした。
時々WBEサイトの情報を見ると、見逃してしまった映画が上映されていて、無性に行きたくなります。近所ではないので私はホイホイ行くことができないのですが、東京に住んでいる人で映画が好きな人は、ぜひ一度行ってみてはいかがでしょうか?