科学

高校生でも読める!『ゲノム編集とは何か』が示す,生物の教科書の先にある未来。これは必読!

ゲノム編集に関する話題はニュースでも取り上げられることが増えており

以前から大変興味のあった研究領域。

その中でも今日紹介する『ゲノム編集とは何か』は

高校生物レベルの内容が一通り分かっていればかなり素直に読めるだけでなく

この研究分野の先に待つものが何かを俯瞰することのできる

久しぶりに興味深く読めた本だった。

これは是非高校生に勧めたい1冊だ。

DNAを任意の場所でカットできる「CRISPR/Cas9」のお話。

タイトルにもあるように,

この本は2012年に発表されてから遺伝子工学の技術を高次元に飛躍させつつある

新技術「CRISPR/Cas9(クリスパー/キャスナイン)」を

俯瞰できる本だ。

目次は次の通り。

はじめに

第1章 「人間の寿命は500歳まで延びる」は本当かーゲノム編集「クリスパー」の衝撃

第2章 解明されてきた人間の「病気」「能力」「特徴」ーパーソナル・ゲノムの時代

第3章 ゲノム編集の歴史と熾烈な特許争いの舞台裏ー誰が「正規の発明」を成し遂げたのか

第4章 私たち人類は神になる準備ができているかーグーグルとアマゾンの戦略

おわりに

第4章でGoogleとAmazonの話もちょっと出てくるが

著者の小林雅一さんは『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』も書かれている。

彼の専門の1つはITやライフ・サイエンスの先端技術の動向調査であると

プロフィールに書かれている。

彼自身がもともと物理学の専門であることもあってか,

本書の中には遺伝子の正体であるDNA(デオキシリボ核酸)の発現,

つまりタンパク質の合成過程についてはあまり詳しく書かれていない。

順序こそ変えているが,遺伝子の説明にあたる部分は高校生物の教科書の

枠を出ているように思えない。

つまり,クリスパーの技術について本気で知りたければ遺伝子の前知識が必要で,

その前知識がなければ他の本を当たった方が良いと私は思う。

しかしこれは高校生あるいは生物学を専攻する大学の学部生にとっては

無駄で冗長な説明がなく,おそらく復習も兼ねてクリスパーについて

知ることができるに違いない。

例えば,高校生物の教科書に出てくる遺伝子に関するキーワード,

「セントラルドグマ」「ヌクレオチド」「プロモーター」「エキソン」

「選択的スプライシング」「鎌状赤血球貧血症」「SNP」

「クロマチン繊維」「染色体」

さらに,遺伝子工学に関するキーワード,

「制限酵素」「ベクター」「シーケンサー」「PCR」

「DNAマイクロアレイ」「ノックアウトマウス」

これらは教科書に出てくる単語ばかりだが,

本書を読むとこれらの存在意義が整理されるだけでなく,

これを元に「クリスパー」「遺伝子ドライブ」「ゲノム編集」と言う内容について

研究動向と共に理解を助けるだろう。

すでにゲノム編集についてある程度知っている人にとっては

若干の物足りなさにを感じるかもしれないが,

今後この技術を分かりやすく伝えると言う目的があるのであれば

整理の仕方は大変参考になるに違いない。

ただ,私がちょっと残念だなぁと思うのは,

本書の引用・参考文献が巻末にまとめられていない点である。

出典がある部分もあるが,複数の情報網で信頼性を担保する必要はある。

おわりに:高校生や大学生が読むべき必読書。

さて,この記事では結局のところクリスパーについて何も説明していないが,

それは本書に預けたい。

しかし高校生でも生物を習っていれば読める内容なのは間違いない。

ぜひ勧めたい一冊だ。

一方,課題が残っているとしたら,

遺伝子とそのはたらきをいかに分かりやすく伝えるかだ。

もし遺伝子に関心があれば,

個人的にオススメなのは『DNAの構造とはたらき:DNA図書館へようこそ』。

ぜひ学び直したい人は,一緒に読んでみてほしい。

遺伝子組換え技術の先にある「ゲノム編集」の一端に触れることができるだろう。

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uru
日常生活と科学をむすぶ、学びのデザイナー。新しいガジェットやギアが大好き。好きなことは読書、バイク、旅、温泉、アニメ鑑賞その他いろいろ。生活をよりシンプルに心地よいものへ変えていきたい。

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