こんにちは!uru(@uru_)です。今回は学校図書館の蔵書管理システムについて考えたことをお伝えします。
私は高校の理科教員であって理科教育を専門としていますが、どういう因果か、今年は学校図書館(図書室)をたった一人で任されています。
学校図書館には常駐する学校司書はいません。私に仕事が降ってきたのは、司書教諭の資格があり、学校図書館業務について一番詳しいのも私だったためです。一人での担当は小規模校の校務分掌では珍しいことではありませんが。なんとなく今年は(も)器用貧乏しているような気がしてなりません。
学校図書館を任されたからには、読書活動の推進はもちろん,学校図書館の学習環境をデザインしたり、情報活用の促進を促していく必要があります。しかし勤務校にはある意味図書館にとって最も重要なものが欠けていました。それが学校図書館用蔵書管理システムです。何千何万の冊数をアナログで管理するのは無謀に等しく、蔵書管理ができなければ,学校図書館としての機能を促進するどころか、維持するのさえ危うくなります。
なぜそのような状況に陥っていたかといえば、それは小規模校故に良くある典型的な落とし穴にハマっていたからです。
- 前任者が安定せず,定期的にコロコロ変わっていたため問題意識が共有されていなかった
- 前任者である司書教諭が図書館情報やその処理についての理解が十分でなかったこと
その理由の一端には、コンピュータに対してあまり知識のない国語科教員が司書教諭として配置されることも原因にあります。同じような悩みを抱えている学校は全国でも少なくないでしょう。
そこで今回は、そのような学校図書館が抱える問題について触れた上で、これから図書データベースを構築するにあたって導入を考えている無料の学校図書館用蔵書管理システム「Win書庫V4」について紹介します。
学校図書館(図書室)の現状
司書教諭と学校司書の実態
先述したように、勤務校の司書教諭は(一応)私が担当しています。
実は他にも資格を持っている教員はいるのですが、少なくとも校務分掌として図書室を任されているのは一人しかいません。なので、基本的には学校司書が担う仕事も全部やらなければなりません。
司書教諭とは、学校図書館法第5条に示されている学校図書館の専門的職務を掌る「教諭」のことであり、講習で指定された10単位を修了すればその資格を得られます。ちなみに理科教員で司書教諭を持っているのは大変珍しいらしいです。
この司書教諭の配置ですが、学校図書館法附則第2項に司書教諭の設置の特例というものがあり、11学級以下の学校では「当分の間」司書教諭を置かなくても良いことになっています。この「当分の間」がいつまでなのかは定かではありません。
文部科学省(2015)『平成26年度「学校図書館の現状に関する調査」の結果について(概要)』によれば、司書教諭の発令状況は,小中高の順に66.2%,62.6%,81.4% となっています。小中の割合が低いのは、小規模校が多いためです。
一方、平成27年の改正で学校図書館法第6条にやっと明記された学校司書は学校図書館の専門的職務を掌る「職員」のことです。その設置状況は、小中高の順に54.4%,53.1%,64.4%になります。
司書教諭よりも設置状況が低いのは、学校司書の設置が「努力義務」であって「設置義務」ではないところにあります。ただ、この数値には無償ボランティアは含まれていないため、小中学校では学校図書館業務を行う人員の実質的な数値はもう少し高くなると思われます。
学校図書館の管理・運営にはかなり専門的な知識が必要ですが、そのことは世間はおろか、学校の中でも必ずしも認知されているとは言えません。それもあって、学校図書館を管理する人員はとても限られており、小規模校であるほどその悪影響は大きくなる傾向にあります。
また、司書教諭で専任というのはさらに貴重な存在です。大半の司書教諭は私のように教科指導も持っています。人員が少ない場合、何を頼るかといえば、機械に頼るしかありません。
特に蔵書管理をアナログでやるというのは無謀に近しいわけですが、蔵書のデータベース化の状況がどうなっているか、次をみてみましょう。
蔵書のデータベース化状況
先ほどの文部科学省(2015)の調査結果から引用すると、蔵書をデータベース化している学校の割合は、小中高の順に71.6%, 69.9%,90.5%です。この数値を見て何を感じるかは人それぞれでしょう。
私の感覚では、パソコンやスマートフォン,タブレットがこれだけ普及しながら、高校ですら10校に1校の割合で蔵書管理がデータベース化していないというのは驚愕の事実です(そして残念ながら、現勤務校もその1校です)。
学校図書館が学習・読書・情報の提供を行う場であるにもかかわらず、その道具たる図書の管理すらままならない学校というのは決して少なくないのです。
無料の学校図書館用蔵書管理システム「Win書庫V4」
このような現状が続くのはさすがに良くないと考え、約半年学校側に説得を続けた結果、ようやく蔵書管理システムによる図書データベース構築を許可してもらえました。
ここで決め手となったのは、無料の学校図書館用蔵書管理システム導入の提案です。
有料の学校向けシステムは探せばたくさんあるのだけれど、それを購入する許可が下りないからこそシステム導入が進まない現状もあるので。無料でも信頼に足る管理システムがあることを紹介しました。
無料で配布されている図書や資料の管理システムは、例えば以下のようなものがあります。
その中でも、今回図書データベース構築に選んだシステムは最後に示した「Win書庫V4」です。
その最大の理由は、1989年のリリースから2016年現在まで未だに更新され続けているという点にあります。もちろんWindows10にも対応済みです。あと、有償にはなりますが、サポートを受けることもできます。あと、これは技術的な話になるので提案したときには伝えませんでしたが、文字コードUnicodeに対応し、64bit OSでも使用可能というのもかなり魅力的です。
さらに、「Win書庫V4」は無料であるにもかかわらず、学校図書館に関係する以下のことができます。
- 基本データベース(基本書誌データ,蔵書エントリーデータ,書誌エントリーデータ,学校状況データ,個別館データなど)
- 利用者データ(生徒・教師・一般)・貸出記録・貸出統計
- 会計処理データ(図書年度会計,資料購入計画)
これまでこれらの情報が一元管理できていなかったことも踏まえれば、「Win書庫V4」による図書データベース構築はコストを最小限に減らしながら実現可能なかなり現実的な選択肢といえるでしょう。
おわりに:学校図書館の機能をもっと多くの人に知ってほしい
この記事では学校図書館の現状とWin書庫V4の概要について簡単に紹介しました。ただし,Win書庫V4に関する図書データベース構築の情報は公式以外ではほとんど紹介されていません。
そこで今後は実際にデータベース構築の作業を行いながら知り得たWin書庫の運用方法については今後も整理して紹介していきたいと思います。
どこかの学校の図書室のお役に立てば幸いです。